グリーフ
遺影に手を合わせた理由 実家の両親に会いに行くため、自宅を出発する直前だった。 玄関にいた娘の彼氏、寧守太(ねすた)が、何かを思い出したような表情で靴を脱ぎ、和室にある妻の祭壇に向かった。「急にどうした?」と尋ねてみたが、彼は何も答えなかっ…
入浴中の母娘の会話 娘が、7月に受診する健康診断の申込書を見せてくれた。 オプションの乳がん検査にもチェックが入っていた。 「ちゃんとわかってる」ということを伝えたかったのだろう。 僕は「いいことだね」と返事をした。 妻が乳がんと診断されたのは…
イチゴ大福 娘の彼氏、寧守太(ねすた)が、5泊6日の沖縄遠征から戻ってきた。 大学のサッカー大会。ねすたにとっては、学生生活最後の公式戦だった。 残念ながら、2回戦で敗退したそうだが、1回戦の久留米大との試合ではゴールも決めた。 勉強にアルバイト…
コンサートでの鉄板ネタ 声楽家だった亡き妻が、コンサートのときのMCで多用していたフレーズがある。 わたくしは、 写真撮影は2000円です。 握手が900円。 ハグが500円。 キスが300円。 と、なっております。 自分のブログにも顔を載せてないので、ご理解い…
手作りの指輪 妻がどこかで紛失したとばかり思っていた。 僕が25年前の彼女の誕生日にプレゼントした手作りの指輪が出てきたのだ。 2000年1月27日、仕事を終えた僕は、取材で知り合った鋳金作家の工房に向かった。彼の指導で銀粘土をリング状に成形し、窯で…
父子の17年間を振り返りながら ひと月ほど前、その日の夜を空けておくように、と娘から言われていた。 目的を聞いても、教えてくれなかった。 娘が指定していた日になった。 夕方、「19時10分に地下鉄の駅前に来て」とだけ、スマホにメッセージが送られてき…
亡き妻と対話 妻の墓参りに行った。 娘と娘の彼氏の寧守太(ねすた)も一緒に。 ねすたを墓に連れてきたのは、今回で2回目。 以前、ここに連れてきたときの僕の行動を思い出したのか。 教会の墓地に到着すると、バケツに水を汲み・・・ 掃除をしてくれた。 …
自分と未来は変えられる 昨年のクリスマスイブ。広島旅行中の娘から、僕に画像が送られてきた。 その画像には、ある女性からのメッセージが綴られていた。 メリークリスマス はな! 広島デート楽しんでね。 楽しいホリデーを!! FROM りょうこ 差出人は、俳…
小欲知足 その日は、娘の入社式。親も同伴だった。 朝、僕はクローゼットから古びたネクタイを取り出した。ネクタイは、それしか考えられなかった。 妻が亡くなる半年ほど前のこと。 「しんちゃん、ネクタイぐらいは良いものをつけないとね」 それまで、高級…
僕たち夫婦の宝物 娘が大学を卒業した。 卒業式の間、僕は自宅の台所に立っていた。 お祝いの食事を作りながら、亡き妻が綴ったブログの一節を思い出していた。 本当に、命がけで産んでよかったとあらためて感じております。 今は、私が、ムスメから寿命を延…
経験に勝るものなし 今日、娘が大阪で講演をする。 演題は「母が私に遺してくれたもの」。 午前4時半に起きると、 娘はもう身支度をしていた。 「頑張ってくるね」 外がまだ暗い中、キャリーケースを持って、博多駅に向かった。 みそ汁作り講座は、小学生の…
亡き妻の誕生日に 妻亡き後、これまでさまざまなメディアに取り上げてもらったが、新聞の一面を上から下まで埋め尽くしたのは初めてのことだった。 僕はかつて新聞社で働き、記事を書く側だった人間。全国紙の一面に掲載することを決めたデスクや編集者の判…
子育て「最終章」 本日(19日)午前11時に毎日新聞ニュースサイトに僕たち家族の記事が掲載された。 娘とのふたり暮らしも今年で17年。長かった。いや、短かったかな。「父と娘の子育て『最終章』」との見出しに、まもなく訪れる娘の「巣立ち」を感じずには…
芸人さんに感謝 妻が他界した後、幼い娘と2人でよく山に出かけた。 キャンプ道具を一式そろえ、山で火を焚き、ご飯を作り、寝袋で寝た。 自然はいい。悲しみを癒やしてくれる。 いっそのこと、山に引っ越そうかと考えたこともあった。 だが、娘の成長に伴い…
「無敵」の意味 久しぶりに自宅の倉庫から引っ張り出した。 「無敵」の文字が書かれた懸垂幕。 名古屋市在住の書家、矢野きよ実さんから譲り受けた作品を加工したものだ。 今、親しいミュージシャンたちと、この懸垂幕をステージ背景に設置した音楽イベント…
ユーモアを忘れず 2024年がまもなく終わる。 ざっくりと振り返れば、いつも、愉快で居心地の良い場所、ストレスを感じない人たちとのかかわりを求めていた。そして、そこには、娘の彼氏ねすたもいた。 春は、造り酒屋の蔵開きで新酒を味わい。 夏は、海で遊…
人と人をつなぐ 友人の山口覚さんが営むうどん屋に娘と一緒に行った。月に一日だけ開店する「やまちゃんうどん」(福岡県福津市津屋崎)。この店を訪れると、いつも、新しい出会いがある。それも、サプライズ級だ。 今回もそうだった。 うどんがテーブルに運…
21回目のみそ開き 2004年の夏、家族3人で、みそを仕込んだ。 このとき、妻は29歳。左肺にがん転移。 娘は1歳半だった。 あれから20年。毎年、みそを仕込み続けた。 21回目の今年は、娘の彼氏、ねすたにみそがめを開けてもらった。 約4カ月間、自宅で発酵させ…
何があっても大丈夫。なぜならば・・・ 元読売テレビアナウンサーの清水健さんと大分市で対談した。 彼も僕と同じく妻を乳がんで亡くしたシングルファーザー。 対談を終えて、大分駅に向かうタクシーの中で、お互いの近況と今後を語り合った。 わが家の娘は…
突然の出来事 妻千恵の追悼コンサート「いのちのうた」で、アンコール曲「JUMP」の演奏を終え、会場のみなさんにお礼のあいさつをしようとしたときだった。僕の目の前に、娘の彼氏ねすたが立っていた。 「この写真も一緒にお願いします」 ねすたが手に持って…
後で後悔しないように 今朝も午前5時半に目が覚めた。 朝を迎えられたことに感謝。 生かされていることに感謝。 亡き妻がよく言っていた。 人はいつどうなるか、誰にもわからない。 今日は元気であっても、明日、突然この世からいなくなることだってある。 …
「生きる」を楽しむ 音楽が大好きだった亡き妻が、悔しがりそうなほど盛り上がった「にぎやかな法事」でした。昨夜、送られてきた知人からのメールをご紹介し、「いのちのうた 第17章」終了の第一報とさせていただきます。 安武さま こんばんは、今年も最高…
母を身近に感じるステージで 始まりがあれば、いつか終わる日が訪れる。 寂しいが、仕方がない。 今年の「いのちのうた」が、娘の“ラストダンス”になりそうだ。 夜、いつものメンバーでダンスの練習を終えた娘が、ぽつりとつぶやいた。 「多分、今年で最後に…
大切な人を亡くした後、どう生きるか 元読売テレビアナウンサーの清水健さんと対談することになった。清水さんは、妻を乳がんで亡くしたシングルファーザー。家事や子育て、PTA、地域活動などに悪戦苦闘しながら踏ん張って生きている。 対談を前に、清水さん…
家庭教師は娘の彼氏 朝からそわそわしていた。大阪から元読売テレビアナウンサー(現フリーアナウンサー)の清水健さんが、小学生の一人息子を連れて、わが家を初めて訪ねてくるからだ。2人の到着は夜なのに、昼過ぎにはバーベキューの準備が整っていた。 清…
不器用だが、やさしい 妻の葬儀を終えて3週間後の夜、僕たち親子は自宅のバルコニーにいた。当時5歳の娘と一緒に、真夏の夜空に打ち上げられる花火を見ていると、インターホンが鳴った。玄関には、友人で運送会社社長のヨウイチが寿司桶とビールを持って立っ…
娘が仕掛けたサプライズ 仕事を終え、自宅に着くと、クラッカーの音が鳴り響いた。友人たちが、わが家のリビングで待ち伏せしていた。ドラえもんの格好をしたお母さんもいた。 2014年9月11日。51歳の誕生日。小学生の娘が僕の友人らと連絡を取り合って仕掛け…
幼い娘に助けられ 先日投稿したブログ『漫画「はなが幸せなら、パパも幸せ(後編)」』に、次のようなコメントが寄せられました。 2年前に主人が亡くなり、長男はひとり暮らし、長女は昨年結婚し、今は犬と2人です。子どもが幸せなのが一番ですが、実際は寂…
みそ汁に込められたメッセージ 台風10号が過ぎ去り、九州北部は青空が広がった。 少しだけ秋の気配を感じる8月最後の日。 いつものように午前5時に起床。 妻の遺影に手を合わせる。 彼岸が近いからだろうか。 今さらだが、「どうして、君が先なんだ。順番が…
亡き妻が始めた音楽イベント 気づけば17回目。 年に一度の音楽イベント「いのちのうた」。 今年は10月14日(月・祝)に福岡市のライブハウスで開催する。 よくぞ、ここまで続いたものだ。 2006年、がんで亡くなった中学生の女の子を追悼するコンサートとして…